年収モデルと福利厚生

▮ 住友電工の年収のモデル(役職別・年代別)


平社員(20代) 年収400~500万円(残業代込)
平社員(30歳) 年収500~700万円(残業代込)
係長(35歳前後) 年収700~900万円(残業代込)
課長(40歳前後) 年収900~1000万円
部長(50歳前後) 年収1000万円~



▮ 住友電工の給与制度の特徴


昇給により給与は毎年上がっていくが、基本的に入社から10年間ほどは殆ど伸びない(年収は500万円代)。年齢別では、35歳前後で係長クラスになってから基本給と残業代単価が上がって年収は800万円前後となり、課長クラス(40歳前後)で900万円程度、部長クラス(50歳前後)で年収1000万円を超える。

年功序列の傾向が強いため、スムーズに出世する人は、年齢ごとに上記の役職コースをたどる。但し、昇進が遅れても、40代の層はほぼ100%の社員が課長以上に昇進しているので、いつかは年収900万円越えになる。よって、生涯賃金のアベレージは高い。仕事が全くできない人でも、世間一般のサラリーマンより年収が高くなること考えると、非常に金銭的に恵まれた公務員のような会社と言える。

平社員から係長までの年収の振れ幅は、残業時間の長さによる。残業代は原則として全て付くので、残業の長い人と短い人で年収の差が生じるが、基本的に残業時間は世間と比べると短い。管理職からは成果によってボーナスで大きく差が付くようになる。

若いうちの手取り給与は多くないものの、社宅や家賃補助なども加味すると実質的な平均年収は更に+80万円くらいとなり、生活は苦しくない。海外赴任すると手当が一気に増えて、年間で50~70万円アップする。


住友電工の年収のモデル



▮ ボーナスは5ヶ月前後


従来は電機業界の同業他社(全電線)との兼ね合いで、賞与は4.5~4.8ヶ月程度であったが、最近では約5.5ヶ月が支給されている。関西のメーカーとしては、常にトップクラスにボーナスは高い。


▮ 充実した福利厚生制度


福利厚生が充実しており、職場環境も綺麗な場所が多い。住居に関しては、独身寮が完備されており、月に1万円ほどの負担で使用が可能となっている。住宅補助は20年間、独身は3万円、既婚者は6万円をもらって家を借りるか、社宅に入るかを選択することができる。扶養手当も存在し、月に2万円程もらえる。工場では食堂が完備されており1食200円で提供。さらに、カフェテリアプラン制度により各施設が割引で利用可能となっており、その部分でのメリットも大きい。

財形住宅貯蓄制度では、財形住宅貯蓄で年間積立する金額の10%を別に会社が補助してくれる(但し補助には上限あり)。持家取得を会社が支援しているので、将来家を持ちたい人にとってはよい制度だろう。

住友電工の社風

▮ 人を大事にする会社


住友電工は、これまで経営危機に陥ったことがないため、解雇はしないという方針を固く守っている。そのため、数年赤字を続けている部署であっても解雇の心配がなく、のんびりとした平和な雰囲気が漂っている。大きな問題を起こさない限り退職を迫られることはないので、安心して働いている人が多い。裏を返せば、危機感を持っている社員は少なく、だらだらと働いている人も少なからずいる。多少の問題がある人物でも定年まで働ける環境であるため、上昇志向の強い人には向かない企業である。

社風は非常にアットホームで和気藹々とした雰囲気であり、先輩後輩の壁が低く、良い意味での付き合いが多い。新入社員の場合は、各部署への配属後は決め細やかなサポート体制が確立されており、不安な気持ちで過ごすことはない。組織内の雰囲気は非常にゆったりとしており、イジメやハラスメントなどの話はほとんど聞かない。どの部署にも人柄のよい人が多く、総じて過ごしやすい環境であると感じる。陸上競技部に力を入れているが、これも会社の余裕の表れと言えるだろう。

営業には目標はあるが、ノルマは実質的になく、銀行や証券会社のように、数字のことで厳しく詰められることはない。メーカー特有の工場が力を持っており、営業は弱い立場であるものの、会社からの締め付けが弱く、個人の裁量が多い。悪くいえば放任主義。

大阪に本社があるため、その近辺で生まれ育ち、すでに家族をもっているような社員であれば非常に安定した、とても良い就業先のひとつになるだろう。


▮ 挑戦しない風土


大企業特有のフットワークが悪い。口では挑戦するというが、実際には挑戦するという風土は無く、既存の事業を大切にしていくことを第一に考えている。仮に何かに挑戦しようとした場合、上司を論理的に説得する必要があり、なかなか困難。大多数の社員はメリットも少ないためそこまでのモチベーションは無く、トップダウンで与えられた業務のみこなす人が大半。逆に言うと与えられた業務だけこなしていれば評価をもらえるため、そこそこのモチベーションの人にとっては素晴らしい環境だともいえる。

課長職以上になりキャリアの天井が見えてきた人は、仕事はそこそこで会社への貢献は特に意識せず、世間並以上の給料を定年までもらえばOKというフリーライダーになってしまっている。学生のインターンも積極的に受け入れているので、こうした空気を入社前に知りたい人は参加してみると良いだろう。


▮ 縦割り組織


事業部ごとに組織が分割されており、事実上のカンパニー制が取られている。部門や職種を超えたローテーションは基本的にないため、最初の配属先によって会社人生は全く異なるといっていい。

所属する部門によっては、20年前の製品がまだ量産されていたり、息の長いロングセラー製品が多い。また、部署間の異動はほぼ無く、終身雇用で同じ部署での在続年数が長い人が多い。生産の形式や営業形態・取引先は全く異なるため、担当者は固定となり、横のつながり(人材交流)は薄い。中途採用もしているが定着率が意外に高くないため、組織体制や企業文化も昔からあまり変わっておらず、部署ごとに独特の文化が醸成されている。

良い面としては、周囲と協調することが前提であるが、基本的に人が優しく、業務の範囲にとらわれず、みんなで協力していこうという文化を感じる。特に現場の作業者は職人気質の社員が多く(最近は派遣活用などで割合は減ってきたが)、信頼を勝ち取っていれば何でも聞いてもらえる。各部署で会社のことを考えて、業務分掌にない業務をかなり多くやっており、組織表やビジネスルールより、過去の実績や経験を基に仕事している。したがって、周囲の信頼を勝ち取れば、率先して助けてもらえたり、工夫を加えてもらえるので、仕事はかなりスムーズに進む。多くの関係者を跨いで、仕事をスムーズに終わらせる人が優秀な社員とみなされる。

悪い面としては、上記のように人の経験に頼っている部分が多く、人が変わることで、業務内容が変わってしまうことや、新しい物事への対処が遅いことである。新卒や中途で新しく入った人を、新しい仕事に担当させるなどしているが、業務改善や仕組み改革をしようとしても、既存の人が変化を受け入れることに難色を示し、思ったように進まないことが多々ある。


▮ 保守的な企業文化


住友系列の新御三家と呼ばれるだけあり、非常に堅実な会社。ローリスク・ローリターンの道とハイリスク・ハイリターンの道がある場合に、必ずローリスク・ローリターンの道を選ぶ。保有する技術は確かであり、事業内容も運営も極めて堅実で、それが堅実な業績につながっている。業績も増収増益を継続しており、投資家からの評価も高い。風潮としては1人のカリスマが引っ張っていくというよりは、全員がボトムアップとなって会社が進んでいくように感じる。特にコーポレート部門の人間は優秀かつ堅実な方が多い。

保守的な傾向は、年功序列や飲みニケーション、サービス残業、減点主義、決裁を取るのにも複数名の上職を通す必要がある等の悪しき習慣の中に残っている。

新卒入社の社員が多く、退職する社員は少ないため、中途採用やキャリア採用の社員は社風や職場環境に慣れず苦労する様子が多々見られる。



▮ 事業の多角化


多角化を目的とした5つの事業があり、事業ごとに別々の会社の雰囲気が醸成されている。事業部間の人の入れ替わりはあまりなく、事業部により忙しさ・やりがい・業務内容もかなり異なるため、配属される事業部に自分が合っているか否かがその後の明暗をかなり大きく分ける。電力・情報インフラから切削工具、建築資材そして自動車部品と、その事業領域の広さ並びに技術力の高さが特色であるが、近年は自動車事業への傾倒著しくサプライヤー色が日に日に強くなっている。かつては差別化できる技術も保有していたが、最近は自動車メーカーの下請けとしてワイヤーハーネスなどの自動車部品メーカーと化してしまった。

現在は、ワイヤーハーネス事業を軸として、様々な事業で売上高があり、どこかがこけても他で補てんすることが可能な体制となっている。売り上げは海外が6割以上で、海外の拠点も多い。そのため、全社員に対し、最低3~4年以上の海外駐在が課せられている。


▮ 年功序列


年功序列・終身雇用の典型的な日本型企業で、1年間に管理職へ昇進する社員は100人以上いる。子会社が多く、国内では住友電装を筆頭に、住友電工焼結合金、住友電工情報システム、住友電工ファインポリマー、住友電工プリントサーキット、住友電工ハードメタルなど、多くの子会社・孫会社を保有し、海外にも関連会社が多い。そして、それぞれの会社で役職者が非常に多く、逆に言うと、中年になれば、業績や実績に関係なく、どこかの会社で幹部になれる。

住友電工でのキャリア

▮ 職能等級と教育制度


住友電工の職能等級は、専門職→専門職2級→専門職1級→基幹職補→主査→主席→主幹→経営職、と昇進するシステムになっており、主査以下が組合員。組合員は横並びで主席以上は年棒制となる。主席以上は管理職であり、評価によっては百万円単位の給与差がある。

良くも悪くも年功序列の会社なので昇進スピードにはそこまで差がなく、30代後半で課長に昇進するかしないかという時期までは基本的に横並びの人事制度。40代以降に徐々に選抜が行われる。

主席や課長クラスには誰でも大概なれるが、経営職になれるかが出世コースの大きな分かれ目となっている。経営職になれば部門長から子会社経営者を歴任し、そこで実績を残した優秀な社員が本社・住友電工の役員に選任される。


▮ 出世と学歴


学歴重視の社風の為、採用大学はたいてい偏差値の高い旧帝大や一橋大か早慶。当然、トップも超高学歴の社員が就任するため、それ以下の大学だと出世競争には弱い。もちろん学歴の弱い社員でも上位役職へ昇進していく優秀な社員はいるが、関関同立程度の学歴では、相当努力しないと上級職へ上がるのは難しい(採用数も多くない)。そして上位管理職になっても「本社」に残れるのはごくわずかで、結局は東京大学、京都大学出身者が本社に多くなる。但し、財閥系としては、学閥があまり感じられず、役職者も「さん」付けで呼んでいる風通しのよい組織だと言える。

メーカーなので生産技術部が最も出世しやすい。研究開発にも東大出身者を筆頭としたエース級の人材が配属されるため出世が早い。文系では、営業部門が最も出世しやすく、難局に対する突破力が要求される。


▮ 異動


部署をまたぐ異動は少なく、どちらかというと同じ部門に残る可能性が高い。特に理系は各事業部に配属になると、事業部内で異動しながら一個の製品・技術に特化して知識を身に付ける事になる。そのため、希望通りの配属先でなかった場合にモチベーションが下がる傾向が強い。業務上のスキルは身に付くが、あくまで社内でのスキルにとどまり、他の仕事でどこまで活かすことのできるスキルかは疑問。

仕事ができない管理職は若いうちに住友電装などの子会社に左遷される。住友電装は住友電工と異なり、強引な仕事運びをするブラック企業な一面があるため、出向した社員は専門外の仕事を押し付けられ、やめていく人が多いと聞く。

うつ病等で一時的に休職した場合は、緩い部署へ異動することがほとんどで、ある意味人材を大事にしている。また、社内では人事異動があるときに寄せ書きを送りあう部署もあり、家族的な雰囲気がある。


▮ 充実の研修制度


必修研修及び選択研修を含めて多彩な研修が自前の研修センターで設けられているが、業務に直接役立つ研修は少ない。キャリア開発、スキルアップを図るためには外部研修を積極的に利用する必要がある。社内の自主的な勉強会は活発にあるようだか、大阪や東京がメインで、それ以外の勤務の場合は参加したくとも開催していない。


▮ 人事評価制度


人事評価制度は期末の行動評価と業績評価で次年度の給与が決まるオーソドックスな制度。評価者は直属の上司によるものだけで、360度評価などは行われていない。年初に立てた目標に対する達成度合いにより評価が決まるが、目標の達成/未達成で評価が変わることはほぼ無く、基本的には年功序列で昇給・昇進していくシステムになっている。よって、隣にいる先輩が余程ダメな社員であっても抜くことはできない。課長クラスまで2年差があるかどうか、といったところ。大多数は同時に昇進する。つまり評価はあってないようなものである。


▮ 昇進試験


新卒で入社した場合、入社7、8年目までは小論文(昇進論文)と面接による昇進審査があり、合格すると職級が上がっていくが、落ちた話は聞いたことが無い。ただし、試験結果にはグレードがあり、後々に何らかの人事評価で使われている可能性はあるので、気を抜かない方が良いだろう。


▮ 留学制度


海外のビジネススクールに留学する制度がある。留学後に一定の勤務期間を義務付けられてはいるが、給与を支給されての留学なので、大変人気のある制度となっている。それ以外にも、資格や英会話などの様々な自己啓発制度が充実しているため、意欲さえあればメーカーでグローバルに活躍する礎となる部分を習得することができる。