住友電工の社風

▮ 人を大事にする会社


住友電工は、これまで経営危機に陥ったことがないため、解雇はしないという方針を固く守っている。そのため、数年赤字を続けている部署であっても解雇の心配がなく、のんびりとした平和な雰囲気が漂っている。大きな問題を起こさない限り退職を迫られることはないので、安心して働いている人が多い。裏を返せば、危機感を持っている社員は少なく、だらだらと働いている人も少なからずいる。多少の問題がある人物でも定年まで働ける環境であるため、上昇志向の強い人には向かない企業である。

社風は非常にアットホームで和気藹々とした雰囲気であり、先輩後輩の壁が低く、良い意味での付き合いが多い。新入社員の場合は、各部署への配属後は決め細やかなサポート体制が確立されており、不安な気持ちで過ごすことはない。組織内の雰囲気は非常にゆったりとしており、イジメやハラスメントなどの話はほとんど聞かない。どの部署にも人柄のよい人が多く、総じて過ごしやすい環境であると感じる。陸上競技部に力を入れているが、これも会社の余裕の表れと言えるだろう。

営業には目標はあるが、ノルマは実質的になく、銀行や証券会社のように、数字のことで厳しく詰められることはない。メーカー特有の工場が力を持っており、営業は弱い立場であるものの、会社からの締め付けが弱く、個人の裁量が多い。悪くいえば放任主義。

大阪に本社があるため、その近辺で生まれ育ち、すでに家族をもっているような社員であれば非常に安定した、とても良い就業先のひとつになるだろう。


▮ 挑戦しない風土


大企業特有のフットワークが悪い。口では挑戦するというが、実際には挑戦するという風土は無く、既存の事業を大切にしていくことを第一に考えている。仮に何かに挑戦しようとした場合、上司を論理的に説得する必要があり、なかなか困難。大多数の社員はメリットも少ないためそこまでのモチベーションは無く、トップダウンで与えられた業務のみこなす人が大半。逆に言うと与えられた業務だけこなしていれば評価をもらえるため、そこそこのモチベーションの人にとっては素晴らしい環境だともいえる。

課長職以上になりキャリアの天井が見えてきた人は、仕事はそこそこで会社への貢献は特に意識せず、世間並以上の給料を定年までもらえばOKというフリーライダーになってしまっている。学生のインターンも積極的に受け入れているので、こうした空気を入社前に知りたい人は参加してみると良いだろう。


▮ 縦割り組織


事業部ごとに組織が分割されており、事実上のカンパニー制が取られている。部門や職種を超えたローテーションは基本的にないため、最初の配属先によって会社人生は全く異なるといっていい。

所属する部門によっては、20年前の製品がまだ量産されていたり、息の長いロングセラー製品が多い。また、部署間の異動はほぼ無く、終身雇用で同じ部署での在続年数が長い人が多い。生産の形式や営業形態・取引先は全く異なるため、担当者は固定となり、横のつながり(人材交流)は薄い。中途採用もしているが定着率が意外に高くないため、組織体制や企業文化も昔からあまり変わっておらず、部署ごとに独特の文化が醸成されている。

良い面としては、周囲と協調することが前提であるが、基本的に人が優しく、業務の範囲にとらわれず、みんなで協力していこうという文化を感じる。特に現場の作業者は職人気質の社員が多く(最近は派遣活用などで割合は減ってきたが)、信頼を勝ち取っていれば何でも聞いてもらえる。各部署で会社のことを考えて、業務分掌にない業務をかなり多くやっており、組織表やビジネスルールより、過去の実績や経験を基に仕事している。したがって、周囲の信頼を勝ち取れば、率先して助けてもらえたり、工夫を加えてもらえるので、仕事はかなりスムーズに進む。多くの関係者を跨いで、仕事をスムーズに終わらせる人が優秀な社員とみなされる。

悪い面としては、上記のように人の経験に頼っている部分が多く、人が変わることで、業務内容が変わってしまうことや、新しい物事への対処が遅いことである。新卒や中途で新しく入った人を、新しい仕事に担当させるなどしているが、業務改善や仕組み改革をしようとしても、既存の人が変化を受け入れることに難色を示し、思ったように進まないことが多々ある。


▮ 保守的な企業文化


住友系列の新御三家と呼ばれるだけあり、非常に堅実な会社。ローリスク・ローリターンの道とハイリスク・ハイリターンの道がある場合に、必ずローリスク・ローリターンの道を選ぶ。保有する技術は確かであり、事業内容も運営も極めて堅実で、それが堅実な業績につながっている。業績も増収増益を継続しており、投資家からの評価も高い。風潮としては1人のカリスマが引っ張っていくというよりは、全員がボトムアップとなって会社が進んでいくように感じる。特にコーポレート部門の人間は優秀かつ堅実な方が多い。

保守的な傾向は、年功序列や飲みニケーション、サービス残業、減点主義、決裁を取るのにも複数名の上職を通す必要がある等の悪しき習慣の中に残っている。

新卒入社の社員が多く、退職する社員は少ないため、中途採用やキャリア採用の社員は社風や職場環境に慣れず苦労する様子が多々見られる。



▮ 事業の多角化


多角化を目的とした5つの事業があり、事業ごとに別々の会社の雰囲気が醸成されている。事業部間の人の入れ替わりはあまりなく、事業部により忙しさ・やりがい・業務内容もかなり異なるため、配属される事業部に自分が合っているか否かがその後の明暗をかなり大きく分ける。電力・情報インフラから切削工具、建築資材そして自動車部品と、その事業領域の広さ並びに技術力の高さが特色であるが、近年は自動車事業への傾倒著しくサプライヤー色が日に日に強くなっている。かつては差別化できる技術も保有していたが、最近は自動車メーカーの下請けとしてワイヤーハーネスなどの自動車部品メーカーと化してしまった。

現在は、ワイヤーハーネス事業を軸として、様々な事業で売上高があり、どこかがこけても他で補てんすることが可能な体制となっている。売り上げは海外が6割以上で、海外の拠点も多い。そのため、全社員に対し、最低3~4年以上の海外駐在が課せられている。


▮ 年功序列


年功序列・終身雇用の典型的な日本型企業で、1年間に管理職へ昇進する社員は100人以上いる。子会社が多く、国内では住友電装を筆頭に、住友電工焼結合金、住友電工情報システム、住友電工ファインポリマー、住友電工プリントサーキット、住友電工ハードメタルなど、多くの子会社・孫会社を保有し、海外にも関連会社が多い。そして、それぞれの会社で役職者が非常に多く、逆に言うと、中年になれば、業績や実績に関係なく、どこかの会社で幹部になれる。

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